ガレも愛した 清朝皇帝のガラス |
The Glass that gallé Adored―Glass from |
中国のガラスの起源は古く、春秋時代末期から戦国時代 (紀元前 5 ~ 前 3 世紀) に遡ります。 当初は主に儀式にまつわる壁や剣装、あるいはトンボ珠や環などの装飾品が多く、貴石や玉の代用品の役割を果たしました。 |
ガラスといえば、「透明性」 と 「はかなさ」 が最大の魅力です。 特に最盛期の清朝のガラスは趣が異なり、「透明」 と 「不透明」 の狭間で、重厚で卓越した彫琢が際立っています。 その類まれなる美しさは、フランス・アール・ヌーヴォー期を代表する芸術家エミール・ガレ (1846 ~ 1904) をも魅了し、彼の造形に取り込まれていきました。 |
本展は、清朝皇帝のガラスの美を、ガレの作品とも比較しながら、有数のコレクションでご紹介する試みです。 英国ヴィクトリア・アンド・アルバート博物館から来日する作品群とともに、お楽しみください。
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'2018 4_24 「ガレも愛した ― 清朝皇帝のガラス」 のプレス内覧会の会場風景です。 |
「ガレも愛した― 清朝皇帝のガラス」 |
芸術家エミール・ガレを魅了した 清朝皇帝のガラスの美 研究し、創作に取り込んだ
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「展示構成」 |
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「展示構成」 |
'2018 4_24 プレス内覧会の作品展示風景、「ガレも愛した―清朝皇帝のガラス」図録などの抜粋文章です。 |
第1章: 皇帝ガラスの萌芽 ―康熙帝・雍正帝の時代 (1696-1735) 西方の影響を受けつつも、独自に展開した中国のガラス製造は、清王朝の時代、飛躍的な展開を遂げました。 康煕 35 年 (1696)、第 4 代康熙帝は、紫禁城内の養心殿に玻璃廠 (ガラス工房) を築きました。 主に皇室内で使用するガラス製品のための工房の設置は、その後 200 年以上に及ぶ清朝ガラスの輝かしい発展の幕開けとなったのです。 工房の管理は、内務府大臣の管轄下で、技術指導はヨーロッパからの宣教師が当たり、職人は、ガラス製造の中心地山東省・博山や、貿易都市として栄えた広州から集められ、特に博山は清代を通じて、ガラス原料の重要な供給地となりました。 続く雍正帝の御世に、皇帝は工房を北京の離宮・円明園に移し、窯場は 6 個所に増加されます。 遺物からみると、当時の器に主に吹きガラスによるもので、簡素ながら力強いフォルムが特徴です。 この時代、公職者の着衣を飾る色とりどりの貴石が、次々と鮮やかな色ガラスに置き換えられたとも伝えられています。 しかし残念なことに、康熙・雍正時代のガラスとされる器は、決して多くに遺っていません。 |
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左・18 《白色長頸瓶》 中国 清時代 おそらく雍正年間 (1723-35 年) 高 22.5 cm 底径 6.0 cm 銘:雍正年製 東京国立博物館 |
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・18 《白色長頸瓶》 すらりとした長い頸の乳白色の瓶。 おそらく吹きガラスによる成形で、素地の肉厚は均等だが、若干の不純物も見られる。 世界有数の清朝ガラス・コレクション内に、いくつか類似作例がある。 それぞれ形状、成形法、大きさは非常によく似通っているのだが、雍正年製・乾隆年製、双方の銘が存在する。 ・20 《藍色鉢》 美しいコバルトブルー色の薄手の鉢。 銘はないものの、雍正年製である可能性が高い。 ・19 《藍色大盤》 もともとは美しい透明の藍色ガラスの大盤。 |
第3章: エミール・ガレと清朝のガラス 19 世紀後半、中国や日本の美術品が、ヨーロッパの絵画や美術工芸に与えた影響は、今日よく知られています。 フランス・アール・ヌーヴォー期の芸術家エミール・ガレ (1846-1904) もまた、その中の一人です。 フランス東部の古都ナンシーで、ガラス、陶芸、家具の分野で活躍した彼は、独自の芸術様式を確立する上で、エジプト、イスラム、中国、日本などで、様々な異国の美術のエッセンスを貧欲に取り込みました。 中でも、ガレと中国の工芸品との関連は、特に 1889 年のパリ万博以降の作品に、如実に表れています。 ガレはこれに先立ち、1885 年 4 月、2 週間ほどベルリンを訪問し、工芸美術館に所蔵される 300 点以上の清朝のガラスを入念に調査しています。 2015 年には、鼻煙壺 3 点を含むガレ旧蔵の中国と日本の工芸品 22 点がオークションに出品されました。 それは彼の東洋美術コレクションのほんの一部ですが、彼の作品と見比べた時、いかにガレが素材感に関心を示していたか、どれほど丹念に観察しながら創作していたかをうかがい知る重要な資料です。 |
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左・100 《蝶吉祥文鼻煙壺》 中国 清時代 嘉慶- 光緒年間 (1800-1900 年) 高 5.9 cm 幅 5.0 厚 2.1 cm サントリー美術館 (エミール・ガレ旧蔵) |
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・100 中国の鼻煙壺 は玉製の鼻煙壺で、吉祥の双喜文の上に、下向きの蝶が浮き彫りされている。 中国で蝶は、愛情溢れる円満な婚姻に例えられてきた。 ・101 エミール・ガレ の黒色ガラスによる 〈悲しみの花瓶〉 シリーズのひとつ。 胴部には、スズメガ、カマキリムシ、バッタ、カメムシと思われる昆虫が彫られている。 ・102 花器「蜻蛉」 は、エミール・ガレが 1889 年に発表した黒色ガラスによる 〈悲しみの花瓶〉 シリーズのひとつ。 死にゆく蜻蛉の耐え難いほどの孤独感を、黒色ガラスと精緻な彫によって詩情豊かに描き出している。 ・141 花器「カトレア」 エミール・ガレ作は、翡翠を思わせる青緑色のガラスに、ピンク色のガラスを被せ、カトレアの花を浮彫とする。 加えて大輪のカトレアを立対的に溶着させている。 ・140 《白地二色被花鳥文瓶》 は、乳白色ガラスに、不透明の桃色ガラスと暗緑色ガラスを被せた後、鳥、梅の木、そして一輪の百合が首をもたげて咲いている様を彫り出している。 |
お問合せTel:03-3479-8600
サントリー美術館公式サイト:http://suntory.jp/SMA/ 主催:サントリー美術館、朝日新聞社 協賛:三井不動産、MS & AD 三井住友海上、サントリーホールディングス 特別出品:ヴィクトリア・アンド・アルバート博物館 協力:日本航空 サントリーホールディングス株式会社は公益社団法人サントリー芸術財団のすべての活動を応援しています。 |
参考資料:「ガレも愛した―清朝皇帝のガラス」 図録、NEWS RELEASE No.sma0032、プレス説明会、他 |
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